薬王堂気まぐれ通信使№814  2020-10-4
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

広島県薬務課と広島県薬剤師会が主催し広島漢方研究会が協力する第55回「薬草に親しむ会」が庄原のかんぽの郷周辺で行われました。
今年はコロナのせいで人数制限が行われましたが約100名の一般参加者が参加くださいました。
薬草と関係のある植物はそんなに多くはありませんでしたが一般植物との区別をすることも大切です。
私は最後尾の講師として約15名の方々と歩きました。
最後尾は前の講師のグループが出発するスピードに合わせるために待機しなければいけません。
その時間を利用して人数分の傷寒論序文をコピーし特別授業をしてきました。


張仲景著・傷寒論序の部分

傷寒論とは今から1850年前に中国の長沙(武漢とそんなに離れていない場所)で書かれた医学書です。
かなり昔の文章ですし紙の無い時代からの伝承ですので誤字や誤記もあると言われながら今に伝わり大切にされています。
赤い線で示された意味を概略説明しますと===

余(私)の宗族(ファミリー)は基(もと)多く、向(さき)には二百に余るほどいましたが、建安(西暦195年)紀年(初年)以来、尚(なお)未だ十稔(年)ならざるに、其の死亡した者は、三分の二有り、傷寒は其の十分の七も居ます。

傷寒とは急性熱性疾患で現在の新型インフルエンザに似た症状と推測され昔からこのような伝染疾患に人類は悩まされてきたことがわかるでしょう!とお話ししてみました。
皆さん、うなづいておられました。


間隔をあけて集合

モバイルファーマシイ車も参加して参加者の健康に配慮しました。
さて歩くとしましょう!
いきなり間違えた樹木がありましたので紹介します。
私はアベマキと思いましたがクヌギの大木でした。
薬草ではありませんが皆様に説明する立場ですので悪いことをしてしまいました。
ドングリ()だけを見ると全く区別がつきません。
樹肌のコルク層が発達しているのがアベマキ、そうでなく緻密なしわが多いのがクヌギ
アベマキの殻斗(Cap)の刺は細くクヌギの殻斗では短くずんぐりしています。
アベマキの葉裏は白っぽくクヌギの葉裏は緑が強く艶があるようです。


ナンテンハギ (薬用ではありません)



ここで見られた薬草や役に立つ植物、食用、その他、気をつけなければいけない植物を載せてみましょう。
概略、このようなことを話してきました。

(※ 難しい医学表現は避け配剤においては一処方のみ記載しています↓)

アオキ=葉と樹皮、陀羅尼錠などに配剤、胃腸薬、民間薬
アオツヅラフジ=茎、木防已、痛みや浮腫み、木防已湯に配剤
アカマツ=葉、消炎、松寿仙に配剤
アカメガシワ=葉、胃腸薬として
アケビ=茎、木通、利尿、鎮痛、当帰四逆湯に配剤
アセビ=有毒、葉茎、馬酔木
アマドコロ=根、玉竹、強壮利用
イヌザンショウ=果皮、味付け
イノコズチ=根、牛膝、関節痛、牛車腎気丸に配剤
イボタノキ=着生虫、イボタロウ虫、色素やロウソクの原料
ウツボグサ=全草、夏枯草、利尿、るいれき
ウド=樹皮、和の独活、痛み
ウマノアシガタ=有毒
ウワミズザクラ=樹皮、桜皮、清熱解毒、十味敗毒湯に配剤
エゴノキ=有毒、実、サポニンを魚毒利用
オオバコ=葉茎、種、車前草、車前子、利尿、明目、牛車腎気丸に配剤
オニドコロ=根茎、萆薢、除湿
カキ=蔕、葉、柿蔕、しゃっくり止め、柿蔕湯に配剤
カスミザクラ=樹皮、桜皮、清熱解毒、十味敗毒湯に配剤
ガマズミ=実、果実酒
カマツカ=幹、カマの柄、牛の鼻輪
カワラタケ=菌糸体、利尿、抗腫瘍?
カントウマムシグサ=根、天南星、除湿、二朮湯に配剤
キクバヤマボクチ=葉裏の毛、火ナワ、根を食用
クズ=根、葛根、滋養、保温、葛根湯に配剤
クリ=葉、葉を煎じてかぶれのかゆみ止め
クロモジ=樹皮、烏樟、養命酒に配剤
コシアブラ=食用、新芽
コナラ=材、木炭の原料
コブシ=葉や花の芽、辛夷、鼻の通りを良くする、葛根湯加辛夷川芎に配剤
サカキ=葉、神道の供え木
ササ=葉、茶飮
ササユリ=根茎、咳止め、滋養、百合固金湯に配剤
サルトリイバラ=根茎、菝葜、和の山帰来、清熱解毒、香川解毒剤に配剤
サルノコソカケ=菌糸体、利尿、抗腫瘍?
サンショウ=果皮、山椒、大建中湯に配剤
シオデ=新芽を食用
シュロ=樹皮、実、黒焼を止血
シラン=塊根、白及、咳止め、滋養、白及散に配剤
スイカズラ=葉茎、花、忍冬、金銀花、清熱解毒、皮膚病、銀翹散に配剤
スギ=葉、線香の原料
スギナ=全草、問荊、膀胱炎などの消炎利尿
スズラン=全草、有毒
ゼンマイ=食用
タラノキ=根皮、タラコンピ、糖尿病などに
ツユクサ=全草、利尿
ナガバジャノヒゲ=肥大した根、麦門冬、咳止め、強心、麦門冬湯に配剤
タチツボスミレ=全草、紫花地丁、清熱
ナガバモミジイチゴ=実、覆盆子、滋養
ナツハゼ=有毒
ナルコユリ=根茎、黄精、滋養、強壮
ナワシロイチゴ=実、覆盆子、滋養
ニガイチゴ=実、覆盆子、滋養
ヌルデ=ムカゴ、五倍子、下痢止め、皮なめし、インク材料
ネムノキ=花、樹皮、合歓花、合歓皮、安静、睡眠
ノアザミ=葉茎、大薊、止血、健胃
ノイバラ=果実、営実、通便、毒掃丸に配剤
フキ=新芽、食用
ヘクソカズラ=実、民間薬、虫刺され
ボタン=根皮、牡丹皮、血の道、生理不順、桂枝茯苓丸に配剤
マグワ=葉、樹皮、桑白皮、咳止め、五虎湯に配剤
ミツバアケビ=茎、木通、五淋散に配剤
ムクゲ=樹皮、土槿皮、清熱消炎殺菌
ヤマウルシ=有毒
ヤマザクラ=樹皮、桜皮、十味敗毒湯に配剤
ヤマノイモ=根茎、山薬、自然藷、滋養強壮、八味丸に配剤
ヤマモモ=樹皮、楊梅皮、虫下し
ヨシ=根皮、芦根、清熱解毒、排膿、薏苡附子敗醤散の配剤
ヨモギ=全草、艾葉、止血、健胃、潤皮膚、芎帰膠艾湯に配剤
リョウブ=若葉、食用
ワラビ=食用
ワレモコウ=根、地楡、止血

㊟ 植栽のものもありました。
観察会は無事終了しました。
シラヤマギクジュンサイナワシログミツルリンドウヤマシロギクヒツジグサなども途中で見られました。
ナツメ(丸くサネブトナツメに近い!)の実を見たりナシ園に寄ってナシを買いながら帰路につきました。
白いニラの花やヒガンバナが奇麗に咲いていましたね。


芸備線沿線に咲くヒガンバナ

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